大阪高等裁判所 昭和24年(を)1406号 判決 1950年2月21日
被告人
佐藤花雄
主文
原判決を破棄する。
被告会社を罰金七万円に処する。
理由
弁護人中村幸逸の控訴趣意第一点(一)について。
原判決は被告会社の代表者佐藤花雄が同会社の業務に関し被告会社製造にかかる衣料品を割当証明書と引換えないで讓渡した事実を認定し、これを臨時物資需給調整法第一條、第四條衣料品配給規則第五條に問擬処断しているが、所論のように右臨時物資需給調整法第六條については、判文上何ら適用を示した形跡がない。
しかし刑罰法令において事実行爲者たる自然人を処罰するの外更に行爲者に非ざるものを処罰するのは、特殊の立法理由に基ずく例外的措置であつて、右臨時物資需給調整法第六條はまさにかかる特殊例外的規定に外ならず、この規定なくしては当然には法人を処罰することはできないのである。そもそも有罪の判決については罪となるべき事実等の外に法令の適用を示すべきこと刑事訴訟法第三百三十五條第一項の明定するところであつて、本件におけるがごとく、行爲者たる自然人に非ざる法人を処罰するような場合には、前記臨時物資需給調整法第六條は單にこれを実質的に適用するに止まらず、判文上これが適用を明示するの要あること右刑事訴訟法第三百三十五條の趣旨に鑑み、殆んど疑なきところというべく、從つて何らこれを示すことなくして被告会社を処罰した原判決はまさに附すべき理由を欠くものといわざるを得ない。